個人・商業用問わず、海外から個人輸入する場合は輸入時に税金を支払わなければならず、受取先の国で関税の手続きをする必要があります。関税で支払う金額は輸送する商品の価格や、免税品などにより異なります。
2022年1月現在個人輸入の場合は、受取人本人が直接手続きをする方法(税関官署で窓口電子申告も可能)と、通関業者に依頼する、のどちらかで輸入納税申告を行うことができます。
税関での手続きは避けて通ることができないため、しっかりと手順を覚えて、申告漏れや税関手続きでとまどうことのないようにしましょう。
目次
個人での通関手続きに必要なもの
個人で通関手続きを行う場合、本人が行う場合と通関業者に依頼する場合でとで必要書類は若干異なります。
本人が税関手続きを行う場合 | インボイスか領収書・パッキングリスト、運賃明細、船荷証券か運送状、荷物に保険をかけている場合は保険証券、印鑑、身分証明、取り扱う商品によっては原産地証明書や諸官庁の許可書・承認書等、商品の説明書やカタログ、その他税関が指示する書類など
※未払い運賃やB/L提出と引き換えに、船会社から荷渡指示図(D/O)を受け取っておくこと |
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通関業者に代行依頼する場合 | 通関業者に任意形式の委任状(初回のみ)、運送書類、インボイス、パッキングリストなどの船積書類、通関後の荷物の配送などの作業図など |
通関手続きの基本的な流れ
通関手続きは商品を国際宅配便で発送するか、一般貨物として発送するか、国際郵便を使用するかで手順が異なります。
文章だとわかりにくいという方は、日本の税関の公式HPに図解でわかりやすく解説していますので、そちらをご覧ください。
国際宅配便の通関手続手順
国際宅配便の場合は、海外の商品販売会社が発注を受け送金を確認後、国際宅配便で商品を発送します。
その後一度該当する保税地域(外国の貨物の保管や輸入手続きが未処理の商品の保管・加工・展示などを行うことのできる倉庫)に商品が集められ、国際宅配業者が税関に申告や納税を行い、許可が下りると宅配業者に引き渡され受取人に配達されます。
窓口電子申告端末を利用した輸入申告
税関官署の窓口にある「NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)」の電子端末から通関手続きを行うこともできます。
この端末を利用する場合は、「輸入(納税)申告に係る情報」必要項目を入力し必要な手続きを行うことができます。
窓口で電子端末による手続きを行う場合は、仕入書など必要書類を揃えたうえで、税関の窓口で申告しなければなりません。
2022年1月現在、窓口電子端末では、以下のような手続きが可能となっています
- 輸入(納税)申告に係る手続(輸入許可前引取りの承認申請含む)
- 修正申告に係る手続(輸入許可後に、納税額に不足があることが判明した場合に、当初申告を修正する手続)
- 輸出申告及び積戻申告に係る手続
- 貨物情報の登録(海上貨物について、申告貨物の搬入先がNACCS不参加保税蔵置場の場合など、利用者が必要に応じて貨物情報の登録を行う際に利用)
- 申告添付登録に係る業務(輸出入申告関係書類、修正申告に係る添付書類をPDF等の電磁的記録により提出する場合に利用)
通関業者に代行依頼するときの手順
一般貨物として輸入する場合は、海外の商品販売会社から商品が発送され、保税地域に一度保管されます。
日本に到着次第、航空会社・船会社などから受取人(もしくは通関業者)に通知が来るので、「仕入書」「運賃明細書」などといった輸入通関手続きで必要な書類を揃え、代行依頼をしている場合は通関業者が、直接自分で手続きを行う場合は本人が貨物が保管されている倉庫を管轄している税関に行きましょう。
税関で「輸入(納税)申告書」と、必要書類を添付して手続きを行います。
なお、通関業者に手続きの代行依頼をする場合は、通関手数料だけでなく国内配送の運送料などもかかるため、事前に料金をHPなどで確認しておきましょう。
国際郵便を利用したときの手順
国際郵便を利用した場合は海外から郵便物として輸送され、日本郵便株式会社の通関郵便局に届き、そこから国内にある税関外郵出張所に配達されます。
このとき無税・免税の商品はそのまま日本郵便株式会社が受取人へ商品を配達しますが、課税される場合は課税の金額や課税金額などによって手順が異なります。
課税品の場合は、受取時に通関料(日本郵便株式会社の取り扱い手数料)が別で発生し、一定期間内に引き取ることができないと発送元へ返送されてしまうため、受取まで時間がかかる場合は日本郵便株式会社か郵便局に連絡する必要がある点は注意しましょう。
国際郵便で発送可能かどうか、送料などは、日本郵便のHPで確認することができます。
税金の合計が1万円以下の場合
税関外郵出張所から、受取人へ「国際郵便物課税通知書(以下、課税通知書)」と一緒に荷物が直接配達されます。配達時に税金の納付を日本郵便株式会社に委託することで、受取が可能になります。
税金の合計が1万円~30万円以下の場合
日本郵便株式会社から、商品の到着と税額などについて電話で連絡が入りますが、配達を希望する場合と希望しない場合とでその後の流れが変わります。
配達を希望する場合 | 直接受取人へ配達されるのでその場で税金の納付を委託することで受け取りが可能になる。
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配達を希望しない場合 | 配達を希望しない場合は、課税通知書が受取人へ送付されます。届いた課税通知書を持参し、指定されている郵便局で納付書を交付受けてから、銀行窓口または郵便局の貯金窓口にて税金を納付することで商品を受け取りが可能になる。 |
税金の合計が30万円を超える場合
税金の合計が30万円を超えてしまう場合は、課税通知書が受取人に送付されますが、商品は配達されません。
課税通知書を持参し指定郵便局で納付書の交付を受けてから、郵便局の貯金窓口か銀行の窓口で税金を納付することで商品を受け取ることができます。
「外国から到着した郵便物の税関手続のお知らせ(ハガキ)」が届いた場合
「外国から到着した郵便物の税関手続のお知らせ」というハガキは、以下のような荷物が届いた場合に送付されます。
- 商品の内容や価格などが不明確
- 輸入貿易管理令あ医薬品医療機器等法などで、所管省庁の許可や承認を必要とする商品
- 別送品・寄贈品など減免税の対象になる可能性がある場合
このハガキが届いたら、記載されている必要書類とハガキを税関外郵出張所宛てに郵送か持参するか、ハガキに記載されている税関外郵出張所に電話で連絡をしましょう。
税関で書類と商品を照合して価格や成分等を確認し、税関で問題がない商品と判断され輸入許可が下りることで、無税・免税品や課税品と同じ手順で商品を受け取ることが可能になります。
課税価格が20万円以上になる場合
課税価格が20万円以上の郵便物が日本に届くと、受取人に日本郵便株式会社から、通関手続き案内が送付されます。
案内書が届いたら、「仕入書」など輸入(納税)に必要な書類を揃え日本郵便株式会社か他の通関業者に通関手続きを依頼するか、本人が荷物の保管されている通関郵便局を管轄している税関外郵出張所に行き、輸入(納税)申告を行いましょう。
税金を納付後、輸入が許可されることで荷物が配達されます。
このとき税金の支払いは現金だけでなく、マルチペイメントネットワークを利用することで、ATMやネットバンキングで支払うことも可能です。
また受取時に通関料(日本郵便株式会社の手数料)が必要になる点に注意しましょう。
ギフトや寄贈品といった、相手から一方的に送られてきたものなど、価格等が分からない場合には課税価格は20万円以下と同じ手続きになりますが、課税価格には商品の価格だけでなく、郵便料金や保険をかけている場合は保険料が加算されるので注意しましょう。
通関手続きで注意すべき点
バッグや腕時計など、輸入可能な商品を購入したのに税関で輸入差し止めになる商品があります。一番わかりやすいものなら偽ブランド品やアニメなどの著作権侵害アイテム(DVDやキャラクターグッズ)などがあげられますが、その他にも商標権侵害物などが税関で見つかると罰金や刑罰を受けることにもなりかねません。
ブランド品だけでなく、楽器や撮影機材など高価な商品は課税対象になっているので、輸入する際は手続きについて事前に確認しておきましょう。
また骨董品や芸術品の国外への持ち出しに厳しい許可を設けている国もあるため、輸入する際は輸出許可や税関申告関係の書類は不備のないよう余裕をもって事前に準備しておきましょう。
通関手続きでなるべく関税を安くする裏技
商品の輸入を行うときは、税関で関税のほかに「輸入消費税」などがかかります。
これは品物やサービスの流通、消費が日本国内で行われたときにかかる税金で、輸入(仕入)者が納税しなければならないもので、その他にも輸入時にはタバコやお酒など特定の商品にかかる税もあるんです。
課税価格は少額輸入貨物の場合は「商品代金+海外から日本までの輸送費用+保険料」となりますが、個人使用目的の場合は個人用品特例で「商品代金」となります。
課税価格の計算方法は、「海外での小売価格×0.6」で、課税金額は以下のようになります。
関税が課されないカテゴリの商品 ※非課税の場合でも地方消費税や国消費税がかかる場合あり |
商品代金が16,666円未満→非課税 | 16,666円以上→消費税のみ |
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関税が課されるカテゴリの商品 | 16,666円以上→関税+消費税 | |
関税率の有無に関係なく、16,666円未満の場合でも「関税+消費税」が免除 されないものの一例 | 酒・タバコ(酒税・タバコ税・たばこ特別消費税は免除にならない) | 革製のバッグ・ストッキング・タイツ・手袋・履き物・ニット製の衣類・スキー靴(個人的なギフトの場合を除き関税等は免除されない) |
計算方法や商品カテゴリごとの税率などを調べたい場合は、税関のHPをご覧ください。
このことから、少しでも関税を安くしたいのであれば、個人使用の場合は商品金額を16,666円未満にして、少量で購入するのが一番でしょう。
また海外の運送会社の運賃は梱包時の重さで変わることがほとんどなので、購入商品の重さなどから送料が安く確実配送してくれる会社を選ぶのも、関税で支払う金額を低くするポイントです。
少額輸入貨物で購入する場合は、商品代金だけでなく送料やその他税の金額を把握し、予算範囲で収まるよう、金額を調整して購入することで税関での支払い額を安くしやすくなります。
関税の金額や処分に納得がいかない…そんなときは、課税後3ヶ月以内に異議申し立てをすることができます。
異議申し立てを行うことで、適切な税額だったかどうかなどを調査・審議してもらうことが可能です。そのため手続きが終わったものでも書類はすぐに処分せずに、一定期間保管しておくようにしましょう。
まとめ
個人・商業問わず海外から輸入を行うときは、輸入時に関税を支払わなけばなりません。関税手続きは輸入者本人が行うこともできますが、必要書類が多く専門知識も必要になってくるため、通関業者に委託することをおすすめします。
個人使用目的のための輸入で関税がかからないアイテムの場合は16,666円未満は非課税となるため、関税を少しでも安くしたいのなら非課税範囲で購入するのがよいでしょう。
税金の金額や関税での扱いに納得がいかない場合は、3ヶ月以内に異議申し立てを行い、調査などをしてもらうことが可能なので、万が一のことを考えて手元に商品が届いてもすぐに書類を処分せず、一定期間手元に残しておきましょう。